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by zqlrz93hsh

男たちの愛憎劇『沈まぬ太陽』と、突撃取材『キャピタリズム マネーは踊る』どっちが社会派?(Business Media 誠)

 誠読者にオススメしたい映画を2つ取り上げ、あれやこれやと対決させる連載『映画でポン!』。第5回は『沈まぬ太陽』VS.『キャピタリズム マネーは踊る』。社会派タイトルはどちらに軍配が上がるのか?【櫻井輪子】

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佐々爺(以下佐々) じ〜ん(魂が、震える)……。

わこちん(以下わこ) おい、お〜い、どした? 爺、いよいよボケたのか?

佐々 うるさいよ! わしはいま、『沈まぬ太陽』を観て猛烈に感動しておるの! くだらないこと、いわないでくれる?

わこ ああ、渡辺謙にやられちゃってるのね。ってことで、今回は『沈まぬ太陽』VS.『キャピタリズム マネーは踊る』の社会派対決ですよ。なんか5回目にしてようやくBusiness Media 誠に馴染んだお題って感じですよ、素晴らしいね。

佐々 作品は社会派だけど、わしら全っ然、社会派じゃないだろ。むしろ社会の落ちこぼれだよ。お題だけでごまかそうとしてもボロが出るんじゃないのか?

わこ またそういうことをいう〜。いいじゃない、底辺からの視点で語ってやろうじゃない、あんたも私も、社会的にはハナクソみたいなもんなんだからさ。ハナクソの声を聞けってんだ、ちくしょー!

●男の矜持、譲れない1点ってやつがあるんだよ

佐々 はいはい、いきなりキレないの。『沈まぬ太陽』の主人公、国民航空労働組合委員長の恩地(渡辺謙)だってどんなに酷い懲罰的人事を受けてもヤケになったりしなかったぞ。それにしても、渡辺謙は日本の宝じゃのう。3時間の長尺にも耐える役者なんて最近は数えるほどしかおらんぞな。

わこ 途中ちょっと飽きちゃうかな? って心配したけど、全然そんなことなかったね。恩地に敵対する行天役の三浦友和もよかった〜。あの長いものに巻かれた末に自分が長いものになっていくあたり。

佐々 恩地と一緒に組合運動やってたのに上層部にまるめこまれてどんどん出世していって、運輸官僚の愛人用マンションの手配からエアチケットの横流しまでせこいとこも含めて腐敗っぷりが壮絶でした。

わこ それにしてもさ、要領よく立ち回るのは必要だろうけど、出世してある程度の地位についたら心を入れ替えて正義を貫くとか、そういう風にはいかないもんなんだろうかね? 行天にだって、「いうことがいちいち正しい」恩地とともに、社会的に正しくあろうとしてた時期があったわけでしょ?

佐々 長いものに巻かれてるうちに弱みを握られたりして後戻りできないようなことになるんじゃねーか? わしらみたいなスタンドアローンな立場の人間には分からないよな。大体、「組織」ってものは大きくなればなるほど機能不全に陥るようにできてるんじゃねーの? 意見も立場も違う人間がより集まってあーでもないこーでもないっていうんだからさ、齟齬(そご)が出るのは当たり前。行政とか国会とかなんてその際たるものだろ。

わこ ああ……。映画の中の利根川総理も利権争いに巻き込まれてグダグダしてましたな。リアル社会でもあんな感じなのか、と思わせる描写だったね。

佐々 国民航空の経営者側と労働者側も当時の時代背景だと、かなりきっぱり敵対する立場なのに同じ会社に属してるんだもんな。

わこ いまの時代から見ると労働組合の要求高すぎるんじゃね? と思っちゃうけど。要求の結果リストラされたり会社がつぶれる可能性は考えたりする必要がない、幸せな時代に見えるよ。カラチやテヘラン勤務も傍目には楽しそうに見えてしまいました、すいません。私が奥さんだったら楽しんじゃいそう。

佐々 ネットが普及したいまの時代に、旅先からツイッターに書き込んじゃう自分探しのバックパッカーみたいなこというなよ。1960年代に「カラチ」なんていわれても、何ですかそれ美味しいの? ってなもんだぞ。学校に行けない子供たちの苦労も考えろよ。

わこ はい、そうでした……。すいません。でも、もうちょっと考え方を変えれば楽になるのに。だって、閑職とはいってもちゃんと給料は出るんだし、異文化交流でほかにはない人脈も作れるわけだし。

佐々 会社の命令で飛ばされる立場じゃ、そう簡単にはいかないんじゃね? 恩地に決定権はないんだからさ。それに、男の矜持(きょうじ)ってもんがあるんだよ! 恩地にはっ。譲れない1点ってやつがさ。それを貫き通す男気が格好良いんじゃないか〜!

わこ 男の矜持ねえ……。家族のために謝ったフリをすることもできない、「不器用な」といえば格好良いが、単に「要領が悪い」だけにも見えるんだけど?

佐々 お前、いま全国の男を敵に回したぞ。要領が悪いといわれようが信念を貫く、そういう男たちがたくさんいたんだよ、昭和は。

わこ 昭和に夢を見すぎだろ……。「大人はズルイくらいがちょうどいいんだ」って加持さんもいってたよ。

佐々 エヴァネタかよ! しかし、未曾有(みぞう)の航空機事故の後に国民航空の会長に就任する国見とか利根川総理くらいの狡猾さは必要かな。それでも官民一体となった腐敗の病巣を取り除くには全然足りないんだけどな。

わこ どこまで腐ってるのよ、っていう……。適当なところで満足できないもんなのかなー。私だってお金はほしいですけども、すんごい大金を使うイメージが貧困なもんで、あそこまで金に執着する気持ちが分からないや。

佐々 好きなんだろ、金が。航空機事故被害者に配るのを惜しんだり、必要なところに回さないで自分でプールしたりしておきたいくらい金が好きだ、っていうモチベーションでああいう地位を目指す人がいるんだろ、ちゃんと志のある人だってそれなりにいるんだろうけどさ。

●お金が好きならアメリカでトレーダーになればいいじゃない

わこ そんなにお金が好きならアメリカでトレーダーにでもなったらいいじゃない。『キャピタリズム マネーは踊る』に出てくる投資銀行のエライ人たちなんかケタ違いの大金持ってってるよ。

佐々 あれはもうレベルが違うっていうか、数字だけのゲームっていうか、なあ……。何か価値観が違うよね。どんなに社会に迷惑かけても社長は高級取りじゃなきゃダメ、運転手付きベンツで通勤が当たり前、的な。

わこ ザ・アメリカって感じだよね、映画全体も、アメリカのドメスティックなドキュメンタリーだった。サブプライムローンに端を発する金融危機とその被害者と加害者(?)に突撃取材するムーア……、マイケル・ムーアの映画をドキュメンタリーといっていいのかどうかはちょっと疑問だけども。

佐々 ありゃあ、そうとう偏りのあるムーア視点だからな……。「きっ○のブログ」みたいなもんで。ムーアの立ち位置が、はっきり金持ち憎し、アメリカ民主党寄りって定まってるから、そういうつもりで観ないといけない。実際のところサブプライムローンの被害者と呼ばれる人々にも何%かの責任はあると思うし。

わこ まあ、ムーアに偏りがあるのは前々から分かってたけど、今回よ〜く分かったのは「マイケル・ムーアはアメリカという国を愛してる」ってこと。ムーアはリーマンショック後のアメリカ発金融危機が世界経済に及ぼした影響についてはたいして興味ないんだなって感じたもん。

佐々 世界経済におけるウォール街の影響力、グローバルな金融危機っていう視点なら、N○Kスペシャルのほうが見ごたえあったな、確かに。

わこ そうそう、ムーアの興味は「僕の大好きな国、アメリカがいまこんなに苦しんでるのは何故なんだ?」っていうほうにあるんだもんね。すごい愛国心を感じたよ。

佐々 その辺、先にバブル崩壊を経験してて、アメリカの状況もバブルなんちゃう? と警告してた日本からすると「おいおい!」と突っ込みたくなるところもあるんだよな。

わこ そうねー、銀行が儲けすぎだ! って叩いて、救済をしぶればしぶるほど救済金がふくらんじゃうのに、とかね〜。資本主義的には銀行いじめたら経済が回らなくなるだけで得にならない、ってことが分かっちゃったからね。公的資金の監視体制が甘かったり、救済されてんのにバカ高いボーナス貰ったりする厚顔さには呆れちゃうけどさ。

佐々 実体経済だけだったら、先進国はいまの生活水準保てないだろうし、ある程度のバブルは必要悪って割り切らないとしょうがないんだよな。いまの体制だと。

わこ 不労所得を全否定はしないけど、バイトしないと食っていけないパイロットとか、アメリカどんだけ?

佐々 あれは驚いたね、パイロットなんて憧れの職業なのに、その足元見て年収200万円未満とか、オフの日はマックでバイトしてるとか。国民航空の組合員もびっくり。

わこ ホントだよ、もっと現場にお金回してくれないとそのうち社会全体のクビが絞まるよ。って、もう絞まってるからこその閉塞感なのか?

佐々 話が大局的になり過ぎなんでそろそろ締めるぞ。結局どっちが社会派なんだっけか? やっぱドキュメンタリー『キャピタリズム マネーは踊る』の勝ちか?

わこ んー、どっちもなんだけど、日本のドメスティックな社会問題としては『沈まぬ太陽』のほうかなあ。

佐々 じゃ、あれだ、国籍で選んでくださいってことだな。

わこ どっちもとにかく「マージンとってる奴は地獄に落ちてください」ってことで。

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by zqlrz93hsh | 2010-06-15 16:48